帯広滞在記 2001 1日目
2001.7.28(土)〜2001.7.30(月) (右:美瑛・深山ラベンダー園のからの遠景) |
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何も無い始まり
心の起伏は平坦のまま穏やかで,まるで我が家に帰るように,・・・・・・
6年間通っている富良野,5年間通っている帯広。
何時もの場所に帰る,そういう旅。
何度も何度も行ったことのある場所,いつか行った事のある場所を又ゆっくりと巡る旅。
そんな旅にしたかった。
何も無い始まりのもう一つの理由
帯広は1997年から毎年遊びに行っているが,必ずネット情報を手に街の中を歩いていた。
帯広滞在記1999でも書いたが,インターネットの普及が今ほどではなく,まだ一部のマニアの世界であった頃。
帯広の情報量は少なかったが,口コミ的情報の発信源にたどり着き,これから心弾む旅行ができた。
しかし,この2年間で,ネット社会は爆発的な進歩を遂げ,情報の氾濫を産み,インタラクティブなはずのインターネット社会が,検索エンジン各社が情報を仕切り,検索キーでヒットするのは,プロバイダに管理される画一的な情報が多くなった。
そして ”ネットサーフィン” なんて言葉も死語になった。
旅の始まりに,インターネットからの検索は意味を減じ,ネット検索データからは煌く情報に行き着くことが難しくなり,ガイドブックの情報検索と等しくなった。
インターネット創生期かネットサーフィンを楽しんでいる僕にとっては実に寂しい状況である。
情報化の急激な進展の中で,僕の仕事の質が急激に変った。ネット社会の変化のように急激に。
ゆっくり家族と話す時間も持てない毎日が続いていた。
7.28 美瑛・富良野から帯広へ
羽田を発ったJAS便が午前10時に旭川空港に到着した。
旭川空港の日本レンタカーでホンダのストリームを借りた。
レンタカーのキーをひねり,カーナビを美瑛にセットし,軽くアクセルに足をのせた。
操舵輪を帯広に向け,ゆっくりと切り動かした。
ここから今年の何も無い旅のが始まる。
美瑛へ向かう車内で少し気分がハイになった。
美瑛の空は,雲が多いが,天候は晴れ,内地と比べると気温ははるかに低い17度一寸。 風が肌寒い。
国道を南下する途中,美瑛の少し手前の右に「ゼブルの丘」があり,ここに立ち寄り,昼飯とした。
出発前は,富良野の「くまゲラ」でステーキでもと豪勢な事をいっていたはずなのに。
長女と僕の昼食はライトな「冷やし中華」,家内は「ピラフ」次女は「スパゲッティ」となった。
いつもと同じ軽食メニュー「うんいいぞ・・何もない・・いつもと変らない」と,納得をした。
軽食の後,子供達二人は「別バラメニュー」の「シフォンケーキとアイスクリーム」「クレープとアイスクリーム」を売店で注文,帰り際に「とうもろこし」を家族で1本完食。・・・今年の旅行はまたしても,人に優しく胃袋に厳しくなりそうな予感である。
ステーキは無かったけれど,それなりに楽しんでいる僕。
カメラ片手に家族のスナップ写真をパシャパシャ取りながら,空を見上げた時,大きなため息が出た。
ここも観光地化がずいぶんと進んだものである・・・・。
そして気を取り直して,ファーム富田に向かう。
ファーム冨田では,駐車場にすんなりと入場できたが,すでに中は人の海。
次女は後部座席で,静かに寝息を立てている。
長女と僕だけで,入り口に行き,写真をパシャリとやった。
ふと横をみると,結婚式の支度,バージンロードが作らている。
ゴルゴ松本君 (よく似ていたのでそう呼ばせてもらう) が, 「あ!命」 じゃ無なかった,時計を見ながらそわそわとしている。
新郎新婦の到着のを待っているのだろう。
この混みようと,なんとも奇妙なバージンロードからはさっさと逃げるが勝ちである。
このファーム冨田にも何度も来ているが,くる度に施設が大きくなる。そしてここでもため息がでた。
”ラベンダー羊が丘”でいつもの富良野に出会う
車に引き返した僕らは,「ラベンダー羊が丘」へ向かった。
ファーム冨田か富良野の水田地帯を横断し,大雪山側の丘陵地帯に分け入る。
畑作地帯に入ったとたんに,ポプラの木に縁取りされた,広大な麦畑や玉ねぎ畑,何十年も農民が丹精を込めて守っている畑作地帯が出現する。
僕は家内に話しかけた。
「良い景色だね,やっぱりここは良いね。何回来てもいいね。」
家内が相槌をうった。
畑作地帯の外れに,もうすぐ壊れそうな東屋が見えた。 ”ラベンダー羊が丘”である。
「ああ,ここはちっとも変っていない。」 僕は笑いがこらえきれなくなった。
6年前に初めて来た時も,今も,羊と馬とラベンダーと,そして羊が丘から望む,富良野・美瑛の丘陵地帯も。 「やっぱり,ここはいつものままだ。」
娘二人は”ラベンダー羊が丘”で馬に乗る
羊が丘ではポニーが2頭,サフォーク種の羊が5頭ほど,放牧場に放たれている。
次女は北海道にくる前から,馬に乗ることを硬く心に決めていたらしく,馬を見るなり,真っ先に駆け寄ったほどである。
人が柵に近づくと,家畜が餌をねだりにやってくる。
この施設のお爺さんが,番をしていて,1回500円でポニーに乗せてくれる。
一周200メートルほどの柵のの中を,手綱を曳いて回ってくれて,家族が一緒だと写真のビューポイントで止まってくれるなどの細やかな配慮をしてくれる。
子供達は代わる代わるポニーに乗った。誰よりも喜び,人一倍楽しんだのは二女である。
ここの施設ではサフォーク種の羊肉のジンギスカンも食べられる。
僕らの後から来た家族連れは,ジンギスカンを注文し,楽しそうに食べていた。
でも僕ら家族にとっては,今,子供達の手から嬉しそうに餌を食べていた羊を見ながら,羊の肉を食べる気にはならないので,「ここでのジンギスカンは絶対にありえないとね。」と,互いに話し合った。
何気なしに,あたりを見回すと,僕らの後から,次々に観光客が来ている。
乗馬コーナーにも順番待ちの人が出来た。
さっきまで,ひまそうに僕らと話しをしていたお爺さんは,本業の馬の手綱持ちで忙しくなってしまった。
”共済農場・富良野ジャム園”で又ため息
ベベルイを通って,富良野の六郷に出た。
山際の道路を通ると,羊が丘からは,10分ほどで六郷に出る。
六郷ではまっすぐに富良野ジャム園の奥の展望所にいった。
通りがけにジャム園を見ると,一昨年には無かったアンパンマンハウスが出来ており,アンパンマンの着ぐるみが,建物の入り口の前で子供達と遊んでいた。
ここも観光客相手に施設の拡大が行われている。
儲かることはいいことである。
都市と農村をつなぐ方法,農村を潤す方法は,都市マネーの還流をいかに促すかを追求することである。
グリーンツーリズムなる言葉が流行る昨今,農村の施設が近代化することは悪いことではない。
そこに就労先あり,暮らしが成り立てば,それは最も良いことである。
以前に観光振興を職業にしていたから,理屈では分かっている。 しかし,今日はなぜかため息が出る。 僕は何故ため息が出るか,その理由もわかっている。 ジャム園奥の展望所まで来ると,観光客はずっと少なくなる。 早足で通りすぎる団体客は絶対に来ないし,景色に縁の薄い幼児連れの家族はまずここまで来ない。 展望所のラベンダーは丁度見頃ごろで,あたりを優しく包む芳香を放っていた。 |
富良野ジャム園の花畑 |
帯広の夜
帯広には5年間きているけれど,帯広に泊まったことは無かった。
今年は帯広の中心部にある,北海道ホテルに宿泊することとなった。
僕ら家族はホテルの御好意で,”スタンダードツイン”の料金で”インペリアルツイン”に宿泊することが出来た。
北海道ホテルは6月にリニューアルオープンをし, I T 化に対応したホテルになった。
部屋はなかなか広く,木をふんだんに使っており,とても良い雰囲気である。
そして,このホテル皆様の御配慮には痛く感激した。
E-Mailで書中見舞
I T 化に対応したことで,ベッドの枕元にあるスイッチボックス上に情報端子が設備された。
端子はカテゴリー5のLANケーブルソケットと,電話線ソケットからなっており,接続は客の責任行うが,LANカード及びドライバ類は宿の貸し出しを受けることができる。
早速カテ5のコードをフロントからから借りて,ネットに接続し,安房ネットのメールボックスのメールをチェック,実に快適な接続が保てる。
次は,YOSIDAさんに絵葉書メールを送信。これは問題なく安房ネットから送信ができた。
その次に,SASYOUさんとIWAIZUMIさんに絵葉書メールを送信,ここでエラーが出た。
多分どこか,セキュリティーのハエ叩きでバシッと落とされた感じ。
仕方が無いので,メール送信は中止した。
しかし,世の中益々便利になると痛感した。
僕みたいな,ネット中毒者にとってはここは天国のようなホテルである。
ただいま食事中です
さて夕食ということで,家族の希望を取った。
一番声の大きい二女の”一声”で,食事はてんぷらのコースとなった。
ボーイに聞くと,週末はレストランの予約を行った方が良いとのこと。そこで,和食の六郎内にある「てんぷら鶴来」を予約した。
指定の時間に行くと,席のセットが出来ていない。待合席で20分ほど待たされた後,カウンター席についた。
てんぷらのコースを家族で楽しく食べ,最後にお好みで,ホタテとキスを追加し締めとした。
そのままお休み
部屋に戻り,共同浴場へ出かけることとした。
北海道ホテルの共同浴場は十勝温泉と同じモール泉である。
少しぬめりのある茶色の湯が特徴で,このモール泉は世界で3ケ所しかないとのアナウンスがあった。
露天風呂につかり,空を見上げたが,真っ暗でなにも見えない。今日は星も出ていないようだ。
温泉に浸かりながらつらつら考えるに,僕の住む房州にも同じ様な温泉がある,正木温泉も曾呂温泉もみんなヨード泉である。
モール泉ではなく,ヨード泉であるそれは,海藻分を含む化石海水で,モール泉と同じ褐色の湯である。
モール泉が「植物の化石」ならヨード泉は「海藻の化石」である。
植物の癒しは確か「アロマテラピー」,海藻海水の癒しは確か「タラソテラピー」だったはずである。
どちらの湯も効能は,美肌効果で美人の湯,帯広の温泉と似ていても,房州の温泉はどこもマイナーで営業が下手である。
温泉に浸かりつつ,すっかりくつろいだ僕は,部屋に帰りそのまま深い眠りについた。