ここでは私が愛してやまないちょっと古めの愛器たちや、いつかは欲しいと思っている楽器について 語らせていただこうと思います。

「ちょっと古め」という表現ですが、現在使用している2本の楽器は製造から25〜30年以上経過していますので、 「ビンテージ」と言われる年齢(器齢?)でもあります。
しかし、どちらも創業者が亡くなって久しい時期の楽器であり、米国の楽器メーカーの大合併が進んでいく 過程でブランド化された時期の物であり、希少価値は無い悲運の楽器たちです。
そのような理由で、堂々とビンテージを名乗るにはちょっと恥ずかしい微妙な存在ですが、工場ラインが近代的なオートメーション化 となる直前の、熟練の楽器職人によるハンドメイド(に近いもの)であり、古き良き時代の「良さ」を持った楽器でありながら、 市場では高値になりにくく、ユーザーとしては手軽に購入できるとても有難い楽器たちでもあります。

そんな「ちょっと古め」の名器たち。愛情を持って「セミビンテージ」とでも呼ばせてもらいましょうか。

 Vincent Bach Stradivarius 180ML37SP

#2947XX (Semi Early ELKHARTの最終期)
恐らく世界で一番多く出回っているであろう、ストラドの37黄ベル。
年式的にはビンテージと呼べるが、バックの中では近代物となる為に史料的価値は無く、
オートメーション化となる直前の楽器で、ボアサイズとシリアルは2番バルブケースのリードパイプ側に手打ち。
(この時期以降の楽器は、同じく2番ピストンのバルブケースのベル側に自動刻印)
かろうじてバック史の中でも腕が良いとされる、エルクハート時代の熟練工によるハンドメイド。
しかしながら、バック氏の死後10年程経っている時期で、バルブケースがワンピース構造となっているなど、 合理化が加速的に進んでいた時期でもある。

 BENGE 1X

#390XX (Los Angeles Benge)
あまり日本では馴染みのないベンジだが、Xシリーズの中でも更に希少な1Xモデル。
シリーズを通して軽量なベンジのラインナップ中、唯一のMボアであり一番小さなベルを持つ楽器だ。
外観の一番大きな特徴は、2番抜差し管がベル側に傾斜している点だと思うが、これは創設者エルデン・ベンジが 楽器の製造を始める際に模倣したフレンチ・ベッソンのMEHAモデルと良く似ている。
ベッソンは近代トランペットの祖であり、ヴィンセント・バックもシルキーも皆ルーツはここにあり、すべて ベッソンを模倣してトランペットを作った。
そんな中で、それぞれ独自の進化を遂げて特徴的なトランペットとなっていったが、ベンジは一番フレンチ・ベッソンに 近いスタイルを残したメーカーかもしれない。

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