高徳院が独自に取り組む大きな役割の一つに「ケアプラン」があります。

生と死に向き合い、皆様には「気付き」と「思慮するもの」があるはずです。私たちが行う「ケア」は皆さま一人一人の「心の処方箋」を見つけ、伝え、支えることです。

故人の人生とその人生をどのような願いを立てながら生きてきたのかをまずは巻物に書きまとめるところから始めます。幼子を亡くせば其の恩愛の深さを書きまとめます。遺族がいなければ高徳院がその人生を活かします。高徳院は恩愛の継承を大事と致します。

人は貧しき時代も豊かな世代も日々の生活に追われているし、ある意味で困難の無い人生を送ることなど不可能なはずです。ただ、人の人生は願い事に引きずられるように定められます。故人は険しき娑婆(しゃば)で何を願い生きたのでしょうか?

まず、親の恩愛に報いんと育ち、身を立て、自らが汗を流して初めて父の苦労を知り、汗を流す醍醐味を覚え、運が良ければ家を持ち円満はもたらされるのではなく「築く」ものと気づかされ、ようやく人の死を身近で知り人生や家づくりを学びます。 

家徳安泰の願いを形にするにはひたむきたることの大切さ・恩愛の情・慈悲の念 等々これらが不可欠だったはずです。この形無き尊きものは死と共に失われるのでしょうか? 

 恩に報いると書いて報恩と言いますが、あなたの家の家訓はなんですか?

 人と共に養うと書いて供養と言いますが、あなたの家はどうやって安泰を継承しますか?

 苗字・住居・血縁を家と言いますがが、あなたは嫁に出た娘を家族と言いませんか?

 あなたに子供がいなくても朗らかでひたむきに生きたあなたの人生は私たちが生かします。 

幼なき頃、ただ寝て起きて働いていたと思っていた故人は避けることのできない困難をどのようにとらえて生きたのだろう。この答えの中に皆様が何を継承すべきかが見えてきます。もっと言えば死は終わりではありますが人は形無き尊きものを生かせるはずです。 

叶う願いが少なかろうと故人が幾つもの願いを立てて、それを形にするには何をしたのか?魔法を使うのは異国の宗教ですが私たち日本人は魔法が使えない分智慧・戒め・報恩をもって道や家を築きます。私たちは統計学や宗教学を用いて人と共に養う道と「ケアプラン」を用いて人生と家づくりを支えます。

 伝統技術は文化財ではありません。1千年の法灯は日本人の人と家を支えます。   合掌

              

住職  星  孝 芳

 
御 挨 拶

平成八年度真言宗智山派総本山智積院にて修業し僧戒取得。平清盛像、空也上人等々で有名な京都六波羅蜜寺で奉公しながら種智院大学で教義の研鑽に励む。卒業後は、同寺院にて実戦を経験し、平成十七年、節分には一千人の参拝者が訪れる高徳院の住職に就任する。