河北省鹿泉市-北京 (China)


中国河北省鹿泉市酪農交流会・参加レポート
(2000/02/26-03/01)

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写真にマウスを当てると説明が見えますョ (^o^)/~~

●鹿泉市と酪農の概況
【三鹿乳業公司内意見交換会資料より】

鹿泉市は北京の南方300km位置し、夏はトウモロコシ畑、 冬は小麦畑が一面に広がるコーンベルト&ウィートベル ト地帯である。河北省の省都である石家荘市の西15km市 位置しており、北京への高速道路や鉄道等のトラフィッ クにも恵まれており、今後、生産・加工・流通・販売を 結びつけた農業の発展に大きな可能性を持っている。
全市の面積は603平方km、西部は山地及び中山間地、中 部は丘陵地、東部は平原で各地共、同等の面積である。 8ヵ所の鎮、4ヵ所の郷、1ヵ所の区が有り、208ヶ所の 行政村が有る。総人口は35万人。全市耕地面積は42万ブ (2.8万ha)食糧生産22万トン、飼料生産12万トン前後、 小麦茎幹1.5人乙公斤、トウモロコシ茎幹3人乙公斤、山 野草地7万ブ(4700ha)。現在乳牛飼養頭数4717頭、その内 搾乳牛3296頭、生乳生産12860トン、酪農専業農家520戸 。三鹿乳業公司の年間全脂粉乳生産量4000トン、販売額 7000万元(9億1000万円)。
鹿泉市には、獣医師が一名、郷・鎮には獣医技術 服務者が13名いる。区域内に、飼料工場は5社あり、主に 養鶏用混合飼料を生産している。鹿泉市建設の鹿泉三鹿 乳業公司は、銅治、寺家庄、山伊村、上庄、等南部の郷 ・鎮を中心に、牛乳の生産加工販売までを一貫して行な い発展している。現在、鹿泉の酪農は主に家族経営を基 本として向上しており、自家配合飼料、トウモロコシの 茎葉サイレージの年間給与を行なっている。一部にフス マ、脱脂粕、澱粉糟などの製造粕類を利用している。'99 年には、鹿泉での青刈りトウモロコシ茎葉サイレージの 詰めこみは3万ブ(2000ha)以上であった。鹿泉市は、人 口授精技術を基本として普及して行く。普通の経営で、 搾乳牛一頭当たり年間3000元前後の収益がある。
一面の麦畑、発芽したばかりでした見渡す限りのビニールハウス地帯、中には中国特用野菜 三鹿乳業会議室にて王社長、朱副市長より説明を受ける 鹿泉三鹿乳業有限公司の全脂粉乳工場

●視察交流会及び調査の概要

鹿泉市酪農政策
鹿泉市は中国農業科学院の科学農業モデル都市に指定 されており、農業科学院より朱光副市長が、派遣され 全権を委任されている。
鹿泉三鹿乳業有限公司の王世偉社長は石家荘市乳品廠 社長も兼務しており、獣医師であり、鹿泉酪農産業の 指導者である。
官民を揚げての酪農振興を急速に進めており、農民の 就労の場を増やし農家所得の向上に努めている。

鹿泉賓館にて、鹿泉市副市長、科技出版林社長、応用研究室張孝安氏等と夕食
粉乳プラント視察
搾乳牛5、6頭で専業酪農が成り立つ状況である。プ ラントでの受乳時の聞き取りによると、30頭搾乳農家 もありトラクターやトラックによる持ちこみも逢った が、多くは、自転車やバイクにより牛乳を持ちこんで いた。タンクローリーや、ドラム缶輸送も見られ、朝 夕2回の工場への持込であった。
工場職員の月給は400元(5000円)前後である。製 品の計量、袋詰めは手作業であった。
三鹿乳業工場、朝の受乳風景
酪農家の視察
搾乳牛12頭、育成牛8頭飼養の李風秋さんは、 専業酪農である。乳業工場の共同各搾乳場を利用し ている。'96年より酪農を始めた。以前はトウモロコ シ栽培農家であったが、酪農は儲かるので拡大した。
通年トウモロコシ茎葉サイレージ給与を行ない 、バンカーサイロより手作業で取りだし、1頭当たり 1日25kg〜30kg与えている。
濃厚飼料は、トウモロコシ、フスマ、トウモ ロコシ澱粉粕、綿実油粕大豆油粕、魚粉、骨紛の自 家配合を与えている。1頭当たり年間5000〜6000kgの 産乳量である。飼料給与設計は三鹿乳業の指導によ る。
農家での聞き取り調査
バンカーサイロを利用して、実採り後のトウモロコシ茎葉を通年給与していた。レンガの牛舎とパドックには日除けが有った。 共同搾乳場にて、岩瀬獣医により直腸検査が行なわれた。
共同搾乳場
片側60頭、120頭収容のオートロックのスタンチョン 施設は、三鹿乳業が建設して、26戸の農家が利用し3 回搾乳を実施している。バケット・ミルカーにより搾 乳直後に計量・冷却が清潔に行なわれている。岩瀬獣 医師による直腸検査が披露され、農家に衝撃的な反応 があった。長期不受胎、分娩後の卵巣機能低下などが 多く見られた。軟便な牛が多く、繊維質祖飼料の不足 が覗われた。
共同搾乳場での搾乳風景。26戸の農家が利用
現地酪農講演会
前日の、農家視察時の直腸検査のカリスマ 効果であるのか、100人位の聴講者の予定が200人 以上もの酪農家と関係機関の人達で会場が埋め尽 され、午後の搾乳時間近くになっても、帰る人が いなかった。酪農技術に対する、向学心と熱意が ひしひしと伝わり鹿泉酪農の未来に向かうパワー の大きさと農民の酪農に対する期待の大きさがう かがわれた。質問は、具体的な内容と、改善点に 関する物に集中したが、責任ある回答を見つける 為には更なる調査が必要である事をも感じた。
講演会では、席が足らず多くの人が立ったまま聴講してくれた。

トウモロコシ茎葉キューブプラント
鹿泉市銅冶鎮に河北省鹿泉茎幹開発実験場 があり、収穫後のトウモロコシ茎葉の有効利用を 図る為に、キューブプラントが有った。工場を休 止して私達の視察に対応して頂いた。張士賢場長 の案内と説明を受けた。大量にストックされた材 料には、加工に適さない枯死状態の物も見受けら れた。中国国内向けには実績があり、河北省種牡 牛ステーションでは食い込みが良く過肥傷害が有 るほどである。38頭飼養農家で30トンの実績が有 り、広東省の農家からは60トンの注文が有ったと の事。日本にも積極的に売り込みたいが、問題点 について質問があった。工場渡しでトン当たり10 0米ドルを希望する事と、事前に送られたサンプ ルに対する評価で問題に成った、カビ臭、土砂の 混入、等製品のばらつきに関する問題はクリアで きるであろうし、価格についても日本の農家渡し で1kg当たり25円近辺は努力できるであろうとの 事でした。
サンプルに関しては、日本の公的機関にて 分析済みであり、成分的にも優れており、硝酸態 窒素の含有量も極めて微量なため組み合わせによ っては良い粗飼料である。

訪中団員が其々の立場で「二本立て飼料給与」との関わりを述べ、スライドの上映も行なった。鹿泉茎幹開発実験場のトウモロコシ茎葉のストック
キューブ工場では歓迎の看板を掲げ出迎えて頂いた。トウモロコシ茎葉キューブの製品ストック状況 キューブ・プラントの視察

視察の感想
バンカーサイロの普及と、共同搾乳場の考 え方は素晴らしく、製造粕類や、トウモロコシ茎 葉の利用は低コストな牛乳生産につながり有利な 経営形態であった。乳牛はホルスタイン種である が、中型でボディコンディションはアンダーであ った。乳房の形状は不揃いで改良は進んでいなか った。移動式バケットミルカーでの搾乳も行なわ れていたが、冷却施設は無かった。小頭数の農家 は資金に余力が無いようであったが、酪農は、成 の牛も多く見られた。搾乳牛の割に育成牛の頭数 導も行なわれているが、農家流の判断で徹底して いない。現在は、どの様な経営方法でも沢山生産 すれば儲かる様だ。今後、地域の総合的な開発計 画と連携を取りバランスの取れた、酪農指導が望 まれる事を痛感した。繊維質粗飼料の調達と製造 粕の飼料計算に基づいた有効利用と、農家の生鮮 食品生産者としての意識の啓蒙を含め乳牛の健康 管理の必要性を感じた。
生産者乳価は、500g当り8角の取引である 。(乳価1kg=1.6元=20.8円)北京市内スーパーでは、 1リットルのパックで5元〜9元で売られており、 カラフル牛乳・ヨーグルト製品も同様の値段であっ た。高脂肪牛乳で9元、還元乳等で5元以上であ る。一般庶民には、贅沢な食品であるが、生活水 準の向上に伴ない、消費は益々伸び続けるであろ う。しかし、低コストの牛乳の生産の可能性は、 農民のパワーを見ても当分の間は、衰えるはずが 無く、近い将来日本酪農界にとって最大の脅威と 成るであろう。技術革新の波は、農村にも急速に 浸透しており、昨年には、穀倉地帯であった、北 京から鹿泉市に向かう高速道路や鉄道の車窓から 見る風景には、1年で数千haにも及ぶ中国野菜の ビニールハウス団地が突如出現したと言う事実も 有り、大都市北京の台所ばかりではなく明らかに 日本への輸出が推測された。
アジアの大国日本と言う言葉は、この旅で 、私の心からは、跡形も無く消え去り、隣人に学 ぶ事の大切さを痛感した。

天安門前故宮博物院(紫禁城)中で最大の「太和殿」万里の長城(八達嶺長城)万里の長城(八達嶺長城)より遠景を望む

      ●北京観光

小澤禎一朗氏、越後谷幹雄氏、農文協の 斉藤春夫氏は、2月29日午前中から昼食に渡り 、中国農業科学院での交流会議に出席した(日本 的に言えば、農水省畜産技術会議)、岩瀬慎司 氏、鈴木孝雄氏、尾形茂は、応用研究室の張孝 安氏の案内で故宮、旧称「紫禁城」を観光した。 600年前に建築され500年にわたり24代の皇帝が 執政し、1925年故宮博物院と改名し、1987年、 世界文化遺産として登録される。広大な敷地に 立つ多くの建築物を日本の歴史と対比すると、 島国日本が、今日を迎える為に如何に多くをこ の国から学んだのかを思い知らされる。
裏門より表門に向かい見学したが、多く の外国人観光客と実に多くの日本人観光客が訪 れていた。天安門前から西側に人民代会堂があ り東に改装中の革命博物館と歴史博物館が並び、大通りを 東に1km歩くと北京最大の繁華街王府井が有る、 巨大な百貨店が林立し、有名品、名産品と、物は 豊富に有り、人も溢れていた。今回の旅で私は 、食べられない物は全く無く、全てが美味しく頂 けた。食材の種類と調理法は実に様々で中華料理 が世界中で親しまれる所以を垣間見た気がした。
午後より、会議出席組と合流して、万里の 長城を観光した。圧巻である。言葉も出ず、ただ 山々を延々とうねる長城を見渡すばかりである。 澄んだ大気の中で偉大な人類の力と歴史の流れを、 両の肢で踏みしめながら、正に感無量の思いであった。
3月1日の午前中、大鐘寺見学とスーパーで の買い物をする時間が有り、庶民の足「ミニバス」 も利用できた。案内は農政調査委員会の張安明氏でした。

大鐘寺市内の通勤風景
友誼賓館内のカラオケは、筆談による漢字の勉強会になってしまった(^^;食事中に、お茶にお湯の追加する高度な?技術(^-^)v
王府井の中心に有る老舗の北京市百貨大楼王府井のど真中、北京最大の新東安市場。ここで、凄い火力の炭火のしゃぶしゃぶ鍋で、しゃぶしゃぶを食った。 スーパーに並んだ牛乳類だが、庶民にとっては贅沢な食品である。
終わりに
今回の旅で、新しい友人と、実に多くの新 しい発見があった。自分自身の内側にも多くの新 しい発見をする事が出来ました。今回の企画をさ れた、農文協と、お誘い下さった渡辺先生、山口 さん、そして快く迎えて下さった鹿泉市の皆さん、 中国農業科技出版社社長の林衆家氏、張孝安さん 、全日程において事務局としてお世話頂いた斉藤 春夫氏と通訳として同行して頂いた張安明さんに 心からお礼を申し上げます。最後に、私をここに 導いて下さった「二本立て給与法」を確立された 亡き渡辺高俊先生に感謝致します。
酪農訪中団と、受入関係者


日本 女乃 牛養殖技術交流団団員紹介(2000/03/26)
●尾形 茂
1973年3月に農業高校を卒業と同時に酪農に就業し、傍ら二年間の県の農業研修課程を経て、酪農技術の基礎を学んだ。当時、搾乳牛3頭の兼業農家であり、1頭当りの年間搾乳量は5000kgであった。私の就農により7頭搾乳、1頭当り年間6000kgの経営となったが、反面繁殖障害に悩んだ。その頃、渡辺高俊先生の「二本立てエサの給与法」に出会い。牛に健康なエサの給与をする事が、乳量と乳成分の両方をバランス良く増加させ、繁殖障害の克服する事が出来る事を学んだ。渡辺先生は、二本立ての中でも「基礎飼料」として、牛の体を作る部分に特に視点を当て、野草や飼料作物、稲藁等の自給飼料を使う事を指導しました。「牛創り、草作り、土造り」に通ずる考え方は、搾乳牛35頭育成牛25頭、年間乳量290,000kg1頭当り8,300kgの酪農専業となった現在でも私の酪農経営の原点として生きております。耕作面積は4.5haにデントコーン、ソルガムを栽培し通年サイレージ給与を行っている。家族は私達夫婦、母、高1と中3の娘、小学校6年の息子の6人家族である。
●尾形 茂 【中文翻訳 張 安明】
我1973年3月从農業高中畢業後就開始从事養女乃牛,同時通過在県農業進修班学習二年,掌握了養女乃牛的基本技術。当時我家是養有3頭女乃牛的兼業農戸,毎頭女乃牛的年産女乃量是5000公斤。 由放我的務農,我家女乃牛発展到了7頭,毎頭女乃牛的年産女乃量増加到了6000公斤。但是,我却為牛的繁殖障碍而傷脳精。正是在此種情況下,我看到了「双軌飼養法」,了解到有利於牛身体健康的飼養法可以均衡地増加産女乃量和女乃中的所含成分,克服牛的繁殖障碍。  渡辺先生在指導「双軌飼養法」過程中特別重視用瀬草、飼料作物和稲草等自家飼料作為基本 飼料来促使牛的生長。我現在已成為養有女乃牛35頭、未産女乃牛25頭、年産女乃総量 達到290,000公斤、毎頭年産女乃量達到8,300公斤的女乃農,但是有関「育牛、種草、培土」的思法依然是我経営養殖業的出発点。我現有的4.5公頃耕地上種了飼料用玉米和飼料用高梁,一年到頭進行飼料育貯。我家一共6口人:我椚夫婦、我母親、高中一年級和初中三年級的女児、小学六年級的児子。

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