亜麻の実油は魚臭くない

There’s Nothing Fishy About Flaxseed Oil
Jade Beutler
Nature’s Pharmacopeia(註1)より

筆者ジェイド ビュートラー(註2)は、公認のヘルス・ケア医師である。 王立内科医師会RCPに所属し、成人と新生児の集中治療や、小児科と救急医療の臨床経験は10年以上に及ぶ。 ビュートラー氏はアメリカ最大の健康医学機構HMOにおいて最高のプロの一人である。 彼はサン・ディエゴ・ユニオン紙、ロスアンジェルス・タイムズ紙などの多くの商業紙においてスター的解説者であり、彼の母校カリフォルニア健康科学大学の諮問委員でもある。

亜麻の実油は天然の必須アミノ酸の最も多い供給源である。 アルファ・リノレン酸を57%、リノール酸を17%含んでいる。 これは人間の生化学的必要によく適していて、オメガ−3とオメガ−6脂肪酸の最適のバランスである。 
 亜麻の実の油に含まれる必須脂肪酸や海洋動物の脂肪酸が、多くの病気の治療、予防や軽減に役立つことは、多くの研究で証明されている。
 興味ある領域としては:
  高コレステロール血症
  脳卒中や心臓発作の予防
  アンギーナ(狭心症など)
  高血圧症
  関節炎
  乾癬や湿疹
  癌の予防と治療
などがある。
 魚油を補充することにはいろいろな危険性があるにも拘わらず、魚油はこれらの状態に頻繁に勧められている。
 健康や栄養問題の指導的な立場にある人々は、亜麻の実の油が伝統的な魚油による治療よりも多くの利点を持っていることを確信している。 効力、純度、信頼性、価格がその理由である。
 魚油は、オメガ-3脂肪酸と有効成分であるエイコサペンタエン酸が多いことから、しつこく勧められて来た。 しかし有機栽培した亜麻の実の油には、オメガ‐3脂肪酸が魚油の二倍も含まれている。 また、人間と動物での研究で、エイコサペンタエン酸は亜麻の実の油にあるアルファ‐リノレン酸から生体内で作られることが分かっている。 加えて、魚油には補い合う働きをもつオメガ‐6脂肪酸が完全に欠如している。 魚油はホルモン様物質の前駆物質であるアラキドン酸を含んでいて、痛み、炎症、腫れなどの不快な症状を悪化させることが知られている。
 効力と同様に純度が大切である。 現在ほとんど全ての漁場は化学物質で汚染されている。 癌の原因となる殺虫剤DDTは、北極海ほど離れた領域の深海魚にも含まれている。 これらの危険な化合物は脂溶性であり、魚類の脂質に高濃度に蓄積している。 養殖魚を用いることがその問題の解決策と思われるけれども、有益なオメガ‐3脂肪酸が低濃度であり、また殺虫剤の含まれた飼料で飼育されているであろう。
 これと比べて、有機栽培した亜麻の産物は、第三者の厳重な有機農法基準に則って綿密に管理されている。 高品質の亜麻の実油に対する配慮はそれにとどまらない。 評判の良い銘柄物は遮光性・不透明の容器に入れて、光や熱、酸素による破壊を受けないように、98℃F(体温)以下の温度で搾油機によって製油されなければならない。 これと対照的に、魚油を含めて殆どの脂肪や油のメーカーが用いている製造方法は、脂肪酸の傷つき易い多価不飽和結合(註3)を永続的なダメージを与えている。 結果として生じる「トランス脂肪酸」(註4)は人体に重大な傷害を与える。
 更に、魚油は一般的に透光性ボトルに入れて、売られるまでの長い時間室温で保存されている。 魚油は極めて高度の不飽和結合を持つので、熱や光、酸素に反応し易く破壊を強く受けることを考えると、問題なわけである(註5)。 魚油には高分子不飽和結合が多いばかりでなく、荒っぽい製法、取り扱い、包装し方によって、これらの製品に極めて高いレベルの過酸化脂質(註6)を生じ、腐ったような臭いをもたらしているのである。
 恐らく、最も心配なことは過剰な魚油の補充によるビタミンAやDの毒性であろう。 亜麻の実油は魚油と違い天然のベータ・カロテンを含み、生体内で必要な時にビタミンAに転換できる。 従って、ビタミンAやDの毒性のリスクがないことは言うまでもない。 栄養学的には、正しい代謝機能と最適な健康に必要なすべての脂肪酸は亜麻の実油の必須脂肪酸から得られる。 このことは魚油では生理学的に不可能である。
 もっとも際立った違いは、同じ治療効果を達成するための亜麻の実油と比べた魚油のコストであろう。 一ヶ月当り亜麻の実油では12ドル、魚油では70ドルを支払うことになる。
 何よりもまず、食事で重要なものを得るのに、無数のカプセル、あるいは食卓スプーン一杯の肝油を飲んで、吐き気を催す反射を引き起こす必要はない。 素晴らしい味覚、繊細な、高品質なナッツの香り、あなたのお好きなサラダ・ドレッシングや、お好きな食事に有機栽培の亜麻の実油を用いることで台所での喜びが容易に得られる。 (亜麻の実油は加熱したり、料理しないで下さい。)

 多価不飽和脂肪酸のすべてに当てはまるが、亜麻の実油は荒っぽい製造法、包装、保存に対して敏感である。 結果として、本当に健康的なものと言えるものは、入手できるブランドのごく一部のみである。 以下の要点を知っていれば、高品質の亜麻の実油を入手するのは容易である。 
 ・第三者によって有機栽培と品質保証されている製品(ラベルに表示してある販売品)
 ・96℃F以下で搾油機を用いて搾ったもの。
・不透明な容器に入っているもの。
・定評のある健康と栄養関係当局により推薦されている製品。
・製造者から健康食品小売業者へ直接届けられる製品。
・健康食品小売店の冷蔵庫区画にあるもの。
・健康食品小売店までの配達が第三者機関により研究室的分析がなされていること。
・教育された支持材料で支持されている製品。
・熱、光、酸素による傷害のない抽出をした製品。

 健康指導の権威者から最も多く推奨されている銘柄はBarlean’s Organic Oils of Ferndale, Washingtonである。 著明な作家であり自然療法医Michael Murray; 世界的な脂肪と油の権威であるDr. Johanna Budwig;  Beyond Pritikenのベスト・セラー作家であり、一流の栄養学者であるAnn Louise Gittleman、等はBarlean’sを推奨している。
 
註1:天然物薬局方?
註2:ドイツ系の人であろう。 ドイツ在住のドイツ人ならば、ヤーデ ボイトラーと読む筈である。 ボイテルBeutel(袋)を作る人ボイトラー Beutler(財布職人、袋物製造人)から来た名前で、この綴りは英語にはない様であるが英語風に読めばビュートラーであろう。 Jadeはヤーデ川(北海に注ぐドイツの川)、あるいは翡翠から名付けたと思われる。
註3:polyunsaturated bonds 多価不飽和結合。
日本医学会医学用語委員会編集の医学用語辞典(1986年)ではpolyunsaturated fatty acidsを高分子不飽和脂肪酸としているが、多価不飽和脂肪酸とすべきである。
Polyunsaturated fatty acids: (PUFA) unsaturated fatty acids containing two or more double bonds; they occur predominantly as linoleic, linolenic and arachidonic acids, in vegetable and seed oils. Dietary polyunsaturated fatty acids can lower plasma lipid levels and thus lower serum cholesterol; however, they have been shown to lower both low-density and high-density lipoprotein levels, and excessive consumption of these fatty acids has also been linked to cancer. (From: Dorland’s Illustrated Medical Dictionary )
註4:trans−fatty acids トランス脂肪酸(トランス体脂肪酸)。 天然物の cis−fatty acidが安定した構造にあるのと違い、極めて反応性に富み生体に多くの傷害を与える。
trans-fatty acids: stereoisomers of the naturally occurring cis-fatty acids, found in margarine and shortenings as artifacts after hydrogenation. (From: Dorland’s Illustrated Medical Dictionary )
註5:an interesting conceptと書いてある。 皮肉な意味であろう。
註6:lipid peroxides